「尾崎豊」群馬の永遠の胸「 LAST TOUR AROUND JAPAN」

ozaki

パッと聴きはバッドテイクの寄せ集め。これは聴けば聴くほどハマるCDかもしれない(洗脳?)。

先日(2022年3月23日)、『LAST TOUR AROUND JAPAN YUTAKA OZAKI』が発売されました。宣伝文句は「生前最後のツアーである55公演の中からベストテイクがセレクトされている」とのことで。

個人的にめちゃくちゃ嬉しいのは永遠の胸が収録されていたこと(群馬県民会館ver)。正直この歌はどのバージョンでも聴きたいので、聞いたことのない「永遠の胸」の音源が1つ出てきただけでも本当に嬉しい限りです。

追記(2023/4/1)
結局このCDバージョンの「永遠の胸」にハマってしまいました。キーがオリジナルより低いので一緒に歌いやすく、ちょっと疲れた彼の声がなんとも心地よくて、張り切っていて出来上がりもパーフェクトなオリジナル音源よりも、逆に感傷に浸れます。


とはいえこのアルバム、ひいき目抜きで聴けば『ベストテイク?どこらへんが?』という感想になります。最初は「あえてバッドなテイクを集めてきたんですか?」とすら言いたくなってしまうほどでした。おもには当たり前のような歌詞間違い、声の出ていなさ、陳腐なサウンドエフェクト等。

でも何度も何度も聴いていると、コアなファンにとってはベストテイクと言えなくもないと思えてきました。尾崎豊という人間の『素』が、ここに収録された音源からはなんとなく伝わってくる気がするからです。

ファンにとってこのCDはスルメのように噛めば噛むほど、聴けば聴くほどだったわけですけど、普通ならそんなことはしないで「なんだコレ」と思ったらすぐに離れていってしまいますよね(笑)だから尾崎を知り始めの人にはあまり聴いてほしくないと感じます。

でもファンにそんなこと(噛めば噛むほど)を感じてほしくて、今回の音源を世に出すことにした須藤さんはこれらをチョイスしてきたのかもしれません。であれば策士ですね。ファンならこういった万人受けしない作品のほうが逆に喜ぶということをよく理解しています。
はじめに聴いたときは「何かの間違い?」と思うくらい、新アルバムとして発売するにはどうかと思うような音源でした。ですが噛めば噛むほど、聞けば聞くほど本当の尾崎豊を感じ、考えさせられる音源だったとも思えます。

これまでは綺麗にパッケージングされ、ダークでクールに、そして割とシャープにスマートにきまっている尾崎豊が映像化・音声化されてきたように思います。
歌詞間違いも多く声の調子も体調も悪そうで、エフェクトも陳腐さを感じるような今回のテイク集があえて世に出てきたのはファンにとってみれば貴重なことです。

このアルバムは、晩年色々なことに苦しみ悶えていた尾崎豊という人間の「らしさ」が少なからず浮き彫りにされているようでもあります。

相変わらず歌詞をまちがう「永遠の胸」。もはや恒例行事

尾崎豊の最高傑作(個人的に)、「永遠の胸」。

収録されていて本当に嬉しい限りですが‥
オリジナルではキーが高めで声にハリがあり、迫力と壮大さが感じられます。幾つかあるライブ音源ではキーを落としているからかダークさと哀愁が際立ってCD音源とは違った良さ、深さがあります。

今回のLAST TOUR AROUND JAPAN」verでも、最初のサビの「悲しみの意味を探し出す為に」の部分を「悲しみの意味を守り続けるように」と言いそうになって、あとから早口で修正しています。後半の語りもオリジナルとは少し違いますが、これは意図的なアレンジの可能性もありますし、それがライブの味というものです。
もはやこういう間違いや言葉の違いのひとつひとつも愛おしく思えてしまうのがファンというもの。痘痕も靨状態。

この曲では間違えたところをすぐに言い直したり、ほかに「郡山ver」ではサビの最初からもう一度やり直したりもしているので、どれだけ尾崎がこの歌の歌詞に思いを込めていたかも感じ取れます。
この歌には彼が垣間見ていた一つの「悟りの境地」に至るまでの過程が、順序立てて表現されているように思うのですが、その意味を知ってほしいという強い思いがあったのかなと思います。

ただ今回の全ての音源を通して、かなり疲れているような、眠たくてしょうがないような尾崎豊を感じました。
悪く言えば終始だるそうで気が抜けているようでもあるのですが、それがまたオリジナルCD音源の張り詰めてパキッとしたエネルギッシュな雰囲気とは違う、柔らかく聴きやすいムードにもなっていると感じます。

殆ど永遠の胸の話になってしまいましたが、他の曲もライブならではの個性が出ていて面白く、聴き甲斐があります。初っ端の【FIRE】なんかも、初視聴時はずっこけてしまいましたが(歌詞を忘れたまま暫く演奏だけが続いて『Sorry』といってやり直し)。それでも何度も聴いているうちに、これこそベストテイクかもしれないと思えてきてしまいました。もはや洗脳。

よっぽどの尾崎ファンじゃなければやめたほうがいい

よっぽど昔から尾崎が好きで、これまで彼のCD音源を擦り切れるくらい聴き、DVDで動く尾崎も散々見てきた人でないと「なんじゃこれー!」という感想になりそうです。
録音状態もあまりよくなく、本人の声の調子もあまりよくない(最後の3曲は別)ので、「尾崎の新しいCDが出たぞ!」とパッケージに一目惚れして買うと、もしかしたら、もしかしたらがっかりしてしまうかもしれません。

綺麗に仕上がった「作品」というより、煩雑な「ドキュメント」の羅列という感じがします。ファン歴が長くて、とにかく尾崎豊を愛してやまない人ならば、むしろこういうものを求めていると思います。ちょっと尾崎豊が好きくらいの人がこれを聴いたら、逆に遠のいて行きそうな気がします。

Eternal Heart

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