「トム☆キャット」という伝説。小さい体から哀愁の歌声

音楽

世代ではないから、知ったのは数年前、ちょっとした偶然から。私事だけど心身ともに大変だった25歳くらいの頃にたまたま知って、そのポップなのに哀愁のある歌声と歌詞に救われ魅了され、大好きになった歌手の一人。ボーカル以外は有象無象なので興味もありませんが、ボーカルのトムこと松崎淳美さんの才能には心の底から感服する。サングラスをはずすと実はとても綺麗な瞳をされていて、こころも清く美しいのが伝わる。当時まだ20代であろう松崎さんの、ちいさな体から繰り出されるハスキーで切なくなる歌声と歌詞は、よほど彼女が早熟な天才だったのだろうと確信できます。「Sally」などのバラード曲は特に、まるで50歳を過ぎたおばちゃんが歌っているとしか思えないような貫禄と哀愁がある。数年で解散しているのも逆に覚えている人だけ覚えている感じ、ハマる人だけハマる感じが良い。嫌でも耳に入ってきて無理やり中毒にさせるような巷の音楽とは格が違う、崇高なものを感じる。

ふられ気分でロックンロール

一番有名なのはやっぱりこれ。誰の耳にも自然に心地よく入ってくるメロディで、ボーカルの滑舌がとても良くリズミカルで軽快なサウンド。ただ楽しくて愉快なだけでなくどこか切なさも感じさせる、不思議な力を持っている。ノリが良くて激しめなのに「字余りや字足らず」が全く無くて、テンテケテンテケとリズミカルに階段を上がっていってそのまま昇天しそうな軽やかさが芸術的。作詞作曲をしているボーカルのTOMこと松崎淳美さんのセンスと脳内の世界観をたった4分で感じさせてくれる天才ソングだ。

LADY BLUE

バラードで有名なのはこの歌だろう。自分の本当の気持ちに蓋をして「恋なんてしても楽しくないから独りがいい」と意固地になった女の子の気持ちを解き「恋をしよう!」と思わせてくれる厳しくもやさしい歌だ。【そこのレディに告ぐ、直ちに武装解除せよ。】【錆びた鎧脱ぎ捨てて恋に落ちなさい、恥ずかしいことじゃない。】こんな言葉素人にはとても思いつかない。まぁ素人じゃないからアーティストなのだけれど。これも50を過ぎたスナックのママの脳内から創り出されたような、少なくとも二周り年上の女性に論されているような気分になるのである。松崎さんもしかして人生2周目なんじゃないかな…

京葉レトロライン

「アイツのっクーペッ♪クーペッ♪30万キロのポンコツ〜♪」ではじまる、イントロから歌い出しで気分を一気に上げてくれるくれる1曲だ。20代後半くらいになって、10代のやりたい放題めちゃくちゃをした日々を思い返しているような歌詞。これまたポップ調なのに切ないやるせない、けれども愉しい歌なのだ。個人的には一番好きな歌。

SALLY

これはちゃんとしたバラードと言っていい。そう、ちゃんとしたバラードである。やはり松崎さんのセンスが光っている。愛しさと哀愁と心強さと人生を憂いて懐かしんで、楽しく哀れに泣いて笑える傑作なのである。意外とこの歌が一番好きだという人も多いのではないか。ハスキーな声とシンプルながら情景を思い浮かべられる切ない歌詞がマッチして、恋の憂いと酸っぱさを思い出させてくれる隠れているようで隠れてない名曲。

ギャップと言うがそうでもない。さすが可愛い顔して早熟な、人生2度目のおねーちゃん。

この作詞作曲をも手掛けているボーカルの松崎淳美さん。かなりの早熟だったがゆえに、若い頃から沢山傷ついて来たのがちゃんと伝わるのである。傷ついて、人に絶望して、そのうえでまた希望を見出し強く生きてきた人でなければ絶対にこんな歌詞は書けないであろう。声だけでも伝わってくる早熟さがそこにはある。これはわかる人には必ずわかるものだろう。とにかく歌声の哀愁が凄い。圧倒されて吐き気を催すくらいの、濃すぎる哀愁がイヤホン越しに胸を掻き乱す。若くしてカリスマ性をそなえたこのおねーちゃんを、私はいつまでも愛し聴き続けることだろう。

コメント

  1. みずきちがい より:

    深いな…

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